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逆子の普通分娩ってどうなの?

[2024.02.13]

ブログの更新が止まりすぎて、もうやめたのではないかと自分でも思うときがありますが、一応まだやっています・・

今回は当院の分娩の特徴の一つでもある逆子の普通分娩の話です。

現在、逆子はほぼすべてのクリニックで帝王切開です。そして患者さんも「逆子だから帝王切開ね」と言われても何の異論もない人が多いのではないでしょうか?

当院はそれに対し昭和の時代から逆子の普通分娩をしています。実際のところ逆子の普通分娩はどうなのでしょうか?

1994年に日本産科婦人科学会周産期委員会が産科医にとったアンケートによると初めての出産の患者さんが逆子だった場合、普通分娩をすると回答した医師は78%、帝王切開とすると回答した医師は21%、加えて分娩歴があればほぼ普通分娩をするといった結果でした。今からわずか30年前までは逆子の普通分娩は当然のように行われ、「骨盤位経腟分娩を行わないものは産科医にあらず」といった有名な文言もあったくらいです。

しかし、2000年にアメリカで逆子の普通分娩について大規模な研究が行われ「帝王切開の方が短期予後がよい」との報告をもとに、2001年に「早産でない逆子は帝王切開が望ましい」との推奨がアメリカの産婦人科学会から提言されました。その後、逆子の普通分娩の取り扱いが次々と中止される中で2000年の研究での問題点が様々指摘され2006年にアメリカの産婦人科学会からの提言が「逆子の普通分娩は熟練した医師の判断に委ねられるべき」と変更になりました。カナダやヨーロッパなどでも「施設ごとに普通分娩が可能と思われる症例を選別しそれ以外を帝王切開にする」という提言がなされています。

日本では2008年に初めてガイドラインに逆子の普通分娩に関する記載がなされ、現在もほぼ同じ内容ですが、「施設ごとに普通分娩が可能と思われる症例を選別すれば経腟分娩も選択できる。ただし、経腟分娩が取り扱えない施設は経腟分娩を提供しなくてよい」との内容が明記されました。1994年から現在の間までに逆子の普通分娩を取り扱える医師が激減してしまったかは定かではないですが、このガイドラインでの逆子の取り扱いの明記もいい方は悪いですが帝王切開という逃げ道を作ってしまったように感じます。確かに技量が未熟な医師が安易に行うべきではないと思いますが、できないならできるようになろうと考える医師がいる一方、できないならリスクはとらず帝王切開にすればよいとの考えを助長してしまっているように感じます。ガイドラインには施設という集団としては普通分娩はやらなくてよいと書いてありますが、いち産婦人科医として逆子の経腟分娩がとれなくてよいなどとは書いていないのですから。

まとめると、現在進行形で逆子の普通分娩をどうすべきかの研究は各国で行われていますが、「施設毎に普通分娩を行う基準を決めて同意書を作成した上で普通分娩を行うことは妥当だが、できない施設では帝王切開をしてよい」が現在の基本方針で、逆子の普通分娩が「No」という結論は世界的なガイドラインでは出ていません。

つまり日本ではリスクがあるからやらないのではなく、できないからやれないのです。

では、できないからやらなくてよいのかというとその通りだと思います。不慣れなものが行う逆子の分娩など危なくて帝王切開でよいと思います。しかし、逆子の普通分娩が対応できる施設があることはアナウンスする必要はないのでしょうか?

実際ここ2-3年で岐阜県内からのクリニックからの紹介は2件程度です。それに対し、わざわざ県外から調べて受診する人や総合病院からの紹介はその数倍もおり、県外のクリニックの先生から多くの紹介状をいただいています。岐阜では逆子の取り扱いができる施設があるのにそれを患者さんに伝えていないか、危険だからと止められているか不明ですがほとんど紹介はきません。

では、なぜ岐阜ではその情報が伝わらないかというと一つの要因は経営でしょう。岐阜は産婦人科が多く、現在多くの施設が分娩数減少に伴い純利益が減少しています。患者さんが転院ということになれば当然打撃になりますし、何より帝王切開はそれなりに病院に利益をもたらすのでクリニックとしてはガイドラインに逆子の普通分娩をできない施設は提供しなくてよいと明言されている以上、紹介する義務まではないという判断でしょう。

それでいいのでしょうか?

特に普通分娩歴があったり、初産でも160cm前後ある方は逆子でも普通分娩で行ける可能性が非常に高いため相談だけでもよいので是非相談してください。主治医の先生に言いにくければ、紹介状などもなしでよいです。もし話などや診察の結果当院で分娩しなくてもかかりつけの先生に報告などはしませんので、安心して受診してもらえればと思います。

新棟になってから2年ほどが経過しようとしていますが、岐阜市、各務原市、関市、岐南町、羽島郡、山県町など近隣から名古屋、遠くは滋賀や三重などから受診していただき感謝です。分娩制限をかけざるを得ない月も出ていますが、逆子の分娩やTOLACは当院でやらないと帝王切開になってしまう医学的な理由が強いもののため分娩後期でも対応しますので分娩予約今更無理かななども考えなくてよいので気軽にご相談ください。

 

 

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