静脈麻酔と傍子宮頸管ブロックの違い
~静脈麻酔は無痛麻酔ではありません~
日本でのほとんどの施設は静脈麻酔(全身麻酔)のみですが、静脈麻酔は単に寝ているだけで、痛みを抑えているのではありません。痛いのに麻酔で動けないため医療者側には苦痛が伝わらないという現象が起きているだけです。痛みを抑えないため動いてしまい、眠らせるために麻酔量がどんどん増えて呼吸停止などのリスクも増えます。静脈麻酔のみで無痛と表記している施設も散見されますが「痛いのに動けない」と「痛くなくて動かない」の区別ができておらず誤った表記です。
そういった点からWHOが推奨する適切な痛みを抑える方法は傍子宮頸管ブロックです。子宮の神経を局所麻酔薬でブロックし痛みをとる方法です。ただし、静脈麻酔より手間がかかり、ブロックするポイントを理解していないと効果が乏しい難易度の高い麻酔のためできる医師がとても少ないです。
静脈麻酔と比べ、吐き気やふらつきなどの副作用が少なく術後1時間程度で退院できるという回復の速さと、術後もしばらくは麻酔が神経をブロックするため術後の痛みが少ないという特徴があります。
手術中は怖いので眠りたいという人もいると思いますので、そういった方には傍頸管ブロックに静脈麻酔を適量使用して静脈麻酔の副作用である吐き気やふらつきを極力軽減した方法を提案しています。(ただし、帰宅時間は傍頸管ブロック単独よりは遅くなります)
当院では女性医学会でも指導する立場の熟練医師が担当しますので、処置後の回復が早く早期に帰宅できる傍頸管ブロックか、傍頸管ブロックに静脈麻酔も併用して眠るかあなたの希望を遠慮なく教えてください。少なくとも静脈麻酔のみの麻酔は鎮痛とは呼べないため推奨しません。
多くの施設 | 当院の推奨 | ||
静脈麻酔のみ | 傍頸管ブロック+静脈麻酔 | 傍頸管ブロックのみ | |
痛み | 大 | 小 | 小 |
吐き気、ふらつき | 大 | 中 | 小 |
意識 | なし | なし | あり |
帰宅時間 | 遅い | 遅い | 早い |
呼吸抑制のリスク | 大 | 中 | 小 |
WHO推奨 | 推奨しない | 推奨 | 推奨 |
中絶ケアガイドライン2022 エグゼクティブサマリーの疼痛管理より抜粋
全身麻酔(静脈麻酔)を常に行うことは推奨せず、傍頸管ブロック単独か傍頸管ブロックに弱めの眠くなる麻酔を加える方法を推奨