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経腟超音波の高水準消毒

産婦人科でよく使用する、腟に挿入する超音波機械(経腟プローブ)は、患者さんの腟粘膜に接するため感染リスクが非常に高い器具です。ほとんどのクリニックでは器具にゴム状のカバーをし患者さん毎にカバーだけ取り合えて使用します。そして一日の診察終了後にふき取りによる消毒を行っていますが、実はこれだけでは全然不十分です。​

実際、日本で行われた経腟プローブの微生物のよる汚染を調査した結果では96%の経腟プローブから細菌の汚染が検出されました。※​
※Incidence of residual bacterial contamination of transvaginal ultrasound probes. Oide et al., J.Med Ultrason(2019)​

経腟プローブの微生物のよる汚染を調査

米国のCDCをはじめ各国で消毒のガイドラインがあります。患者さんの粘膜に接する経腟プローブはセミクリティカルという分類区分で高水準消毒が推奨となり、高水準消毒は海外では常識です。本来、消化管の内視鏡カメラや人工呼吸器並みの消毒が必要なはずなのですが、日本では消毒液でのふき取りを中心に低水準消毒での対応がほとんどです。

スポルティング分類

経腟プローブの低水準消毒での診察は、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)やB/C型肝炎ウイルス、エイズなどの非常に危険な菌に診察によって感染する恐れがあります。外見上きれいにふき取っても、実際は様々な菌がプローブに遺残していることは、実は産婦人科医療関係者の中では周知の事実です。​

ふき取りによる消毒の効果

超音波機器は精密機械のため経腟プローブの高水準消毒が唯一可能な機器が今回当院で導入したトロフォン2です。​
過酸化水素(H2O2)ミストを発生させ、プローブの表面全体に行き渡ることで表面上の隙間や凹凸まで確実に高水準消毒する機械です。海外では広く使用されており、日本でも有名病院を中心に導入する施設がわずかではありますが増えてきました。

トロフォン2

当院では安心・信頼して来院していただけるクリニックであり続けたいと考え、経腟超音波の高水準消毒を2022年に岐阜県で初めて導入しました。世界的なガイドラインと感染予防対策に標準を合わせて患者さんの安全を守りますので安心して診察をうけてください。

参考資料

参考資料

●:有効/使用可 :十分な効果が得られないことがある ×:無効/使用不可
※1)細菌芽胞が多量に存在する場合を除く ※2)有効塩素濃度1,000ppmの液に1時間以上浸漬が必要 ※3)使用濃度0.525%の場合

参考: 中・低水準消毒の効果については、J感染制御ネットワーク 消毒薬使用ガイドライン2015 第2版より改変​
B/C肝炎ウィルスに対する効果については厚生労働省Q&Aより改変 (HBV平成18年3月改訂 改訂第2版 HCV平成20年4月改訂 改訂第7版) ​
ヒトパピローマウイルスに対する効果については、Meyers et al. (2014) J Antimicrob Chemother 69:1546-50. より改変 

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