経腟超音波の高水準消毒機器を岐阜県で初導入!
早いもので2022年もあとわずかとなりました。今回のタイトルは一般の人からすると「?」というタイトルだと思いますが当院としては画期的な機器の導入だと思います。
産婦人科でよく使用する、膣に挿入する超音波機械(経腟プローブ)は、患者さんの膣粘膜に接するため感染リスクが非常に高い器具です。ほとんどのクリニックでは器具にゴム状のカバーをし患者さん毎にカバーだけ取り合えて使用します。そして一日の診察終了後にふき取りによる消毒を行っていますが、実はこれだけでは全然不十分です。
経腟プローブはよく血液なども付着しており、都度ふき取ったりの消毒をしていましたが、何となく他の医療器具の洗浄レベルと比較すると不潔だなあと感じることもありました。しかし、実際問題として精密機械ですので他の鉄の機材のように高圧洗浄もできず、カバーが破れないように細心の注意を払ってヒヤヒヤしながら使用していました。
米国のCDCをはじめ各国で消毒のガイドラインがあります。患者さんの粘膜に接する経腟プローブはセミクリティカルという分類区分で高水準消毒が推奨となり、高水準消毒はアメリカでは常識です。本来、消化管の内視鏡カメラや人工呼吸器並みの消毒が必要なはずなのですが、日本では消毒液でのふき取りを中心に低~中水準消毒での対応がほとんどです。
経腟プローブの低~中水準消毒での診察は、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)やB/C型肝炎ウイルス、エイズなどの非常に危険な菌に診察によって感染する恐れがあります。外見上きれいにふき取っても、実際は様々な菌がプローブに遺残していることは、実は産婦人科医療関係者の中では周知の事実です。
そこで今回導入した機器ですが、経腟プローブの高水準消毒が唯一可能なトロフォン2です。過酸化水素(H2O2)ミストを発生させ、プローブの表面全体に行き渡ることで表面上の隙間や凹凸まで確実に高水準消毒する機械です。海外では広く使用されており、日本でも有名病院を中心に導入する施設がわずかではありますが増えてきました。
当院では安心・信頼して来院していただけるクリニックであり続けたいと考え、経腟超音波の高水準消毒を2022年に岐阜県で初めて導入しました。実際、1台100万円以上かかり、1回の消毒で400円以上のコストがかかるため費用対効果等を加味した時、導入している病院は全国でもごくわずかですが、経腟プローブを介した感染症リスクは安心・安全な診察を考えたうえでは見て見ぬふりはできない問題と考え、世界的なガイドラインと感染予防対策に標準を合わせて患者さんの安全を守ることとしました。
2022年度は多くの患者様に来院していただき、感謝しかありません。岐阜市、各務原市、関市に加え、遠くは郡上市、可児市、一宮市などからも里帰り分娩などの分娩予約をいただいており感謝です。その期待を裏切らないよう2023年もよりよい産婦人科になれるよう色々と取り組みを進めたいと考えています。