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ピルの詳細

ピルの効果

ピルの主な目的は ①生理トラブルの改善 ②避妊 です。

①生理トラブルの改善

生理トラブルで一番多いのは生理痛でしょう。それ以外に血の塊が多く出る、生理が定期的に来ない、生理がなかなか終わらずにチョロチョロ出血しているなども該当します。それらは全て女性ホルモンが多い状態を示唆し、放置することによって子宮筋腫や内膜症などのさらに症状を増悪させる病気が子宮や卵巣にできてしまいます。そういった病変ができるといざ妊娠したいというときになかなか妊娠できない不妊症という病気のリスクも高くなります。

生理痛は人によって程度は様々ですが生理痛で困っている人は全国に800万人いると言われ、そのうち産婦人科にちゃんと相談してピルなどで治療している人は10%、残りの90%の人は市販の痛み止めなどで我慢しています。ピルは海外だと生理を楽にしたり回数をへらしたり、自由に生理の時期をずらしたりできるライフデザインドラッグつまり生活を自由に創造する薬として広く使用されています。ピルによって生理痛を楽にしたり、回数を減らしたり、生理をずらしたりしていいんです。逆に痛み止めだけ内服して我慢する意味なんて全くありません。

②避妊

避妊に関してピルは海外だと広く使用されており、無料で配布している国もあるくらいで若い女性では避妊方法の第一選択とも呼べる薬剤です。ちなみにコンドームは一般的な使用だと年間妊娠率は18%前後と言われており、避妊具というよりは感染症予防具という位置づけが適切です。それに対しピルの一般的な使用をした場合の年間妊娠率は9%ですのでやはり若い女性が自分の身を守るためにはピルが必要と言えます。逆に年間9%も妊娠するのかと思うかもしれませんが、どうしても飲み忘れ等があると妊娠してしまう可能性はあり、きっちり飲み忘れなく内服できた場合に年間妊娠率は0.3%まで減少します。

ピルの誤解

ピルと聞くと何となく危ないんじゃないかと負のイメージを持っている人が多いように感じます。負のイメージが先行して痛み止めで我慢して勉強や仕事に集中できずやりたいことやつきたい職業につけなかったり、将来的に不妊症になってしまう女性も多数います。以下ではよくある間違ったイメージの説明をします。

① ピルは癌になる?

2018年にアメリカで行われた大規模な研究でピルは癌のリスクを上昇させるかというものです。表の見方としてはHazard Ratio1.0の縦の赤線を横棒がまたがずに左にあるものがリスクの下がる癌で、またがずに右にあるものがリスクの上がる癌です。リスクが下がるがんが卵巣がんと子宮体がんで、リスクの上がるものはありませんでした。唯一、怪しいのが乳がんですがそれでもリスクが上がると言っても喫煙者のほうがよほど高い程度の生活習慣レベルの上昇でした。結果としてすべてのがんでのリスクは上昇しないという結果でした。ピルが癌になるという根拠は乏しく逆にリスクが下がる癌もあります。

② 小中学生は飲めない?

細かい研究の説明は割愛しますが、WHO(2015年)、アメリカ(2016年)、イギリス(2019年)いずれのガイドラインでも初めて生理がきてから40歳までのピル服用はカテゴリー1で使用して問題ないという勧奨が出ており、小中学生でも生理がきている子であれば服用して問題ありません。唯一、10代から内服すると骨密度が減少する可能性が示唆されていますが、カルシウム摂取などの生活習慣や運動などの日常生活を指導すれば問題ない程度とのことですので過度に心配する必要はありません。

③ 体重が増える?

当院で内服している人でも良く聞く話で、これに関しては人の研究がありません。なぜかというとこれを証明するためには、ピルを内服した人たちと内服していない人たちを集めて食事、運動、睡眠などすべての生活習慣を同じにした環境に押し込めて、長期間管理して比較するという方法しか確かめる方法がないのですが、そんな非人道的な研究は認可がおりないため人での研究報告はありません。しかし、「ピルが体重に与える影響を判断するだけの十分なエビデンスはないが、大きな影響がないのは明らかである」との勧奨が現段階では出ているため当院でも体重が増えるという説明は根拠がなく大きな影響はないとの説明をしています。

それ以外にも妊娠しにくくなる等、色々なでたらめがインターネットでは散見されるため、こういった根拠のないイメージだけでの負のイメージは残念でなりません。

ピルのリスク

① 静脈血栓塞栓症

ピルを内服すると体の中の血を固める機能が上がるため、脳梗塞、心筋梗塞、肺塞栓などのリスクが高くなります。ただし、高くなるといっても喫煙や肥満がなければそれほどのリスク上昇はなく安全に使用できます。

また、静脈血栓塞栓症は早めに診断することが重要なため「頭痛」、「胸痛」、「腹痛」、「呼吸苦」、「下肢痛」などの症状が出たら早めに産婦人科に受診することを指導しています。

② 不正出血や吐き気

一番頻度の高い副作用ですが、子宮のがん検診などを適切におこなっていれば特に問題はなく、吐き気は1か月ほどすると軽減し、不正出血も1年も経過するとなくなってくる人が多いです。

ピルの種類

ピルと調べると保険がきくの薬と100%自己負担(自費)の薬と2種類が出てきますが違いは何でしょうか?

先ほどピルの主な目的は①生理トラブルの改善 ②避妊と説明しましたが①は病気なので①を目的に処方すると保険になり、②は病気でないので②を目的で処方すると自費になります。
①で処方する薬剤を低用量ホルモン剤、②で処方する薬剤をピルと呼びますが、使用目的による違いだけで薬の成分はほぼ同じです。
①の薬には「避妊目的では使用しないで下さい」と記載がありますが、内容は同じですので②の効果も②の薬剤と同等にあります。
保険の薬も自費の薬も薬効は同じなのですが処方上のルールがあり、下記のような特徴があるため、価格を抑えた保険の薬を3か月ごとに処方してもらいたい人、1年に1回で済ませたい人など希望により使い分けることもあります。

A:保険薬剤

  • 超低用量と低用量があり、1か月に1回月経が来るタイプと数か月に1回にするタイプもあり種類が豊富。
  • 価格は厚労省が決定するため全国一律だが、薬の種類によって値段は異なり、後発品は自己負担が少ない。
  • 最大で3か月しか処方できない。

B:自費薬剤

  • 基本的には低用量の1種類のみで種類にバリエーションが少ない。
  • 価格はクリニックが自由に設定するが大体1か月2600円~2800円前後する。
  • 12か月分などの処方も可能。

当院のピルの取り組み

ピルと一言で言っても10種類ほどあり、内服方法も一つの種類でいくつもある場合もあるためピルの処方は産婦人科医が誰しも適切に処方できるわけではありません。逆にピルの処方は苦手という産婦人科の先生も数多くいます。

ピルの分野を専門にする医師がおり女性ヘルスケア専門医と呼ばれます。岐阜県には数名しかおらず、女性ヘルスケア学会のHPから検索できますが、当院には女性ヘルスケア専門医が常勤しており患者さんの要望も踏まえて一人ひとりにオーダーメイドの処方をしています。

ピルは慣れるまでは時間がかかる人もおり始めは主訴に応じて薬の種類や内服方法を調整する必要がありますので女性ヘルスケア専門医の腕の見せ所です。ただし、安定して内服できるようになればあとは定期的に処方してとりにくるだけなので重要なのは手軽にピルが手に入る利便性になってきます。そこで当院はオンライン診療を導入し、困ったことがあれば気軽に受診でき薬を調整し、困ったことがなければ手軽に薬がもらえるシステムにしています。

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